見える人のGさんと会っていてふと話を振った。
「目黒不動尊は水に縁のあるお不動様なんだよ」
「知ってる」
「ああ、知っていたか。目黒の『黒』は五行説の黒の意味で、木火土金水の内の水のシンボルが黒なんだ。だから他にも目白不動尊や目赤不動尊なんてのもあるんだ」
「そうなの?」
「あれ? 五行説を知らないの? じゃあどうして水の神さまだって知っているの?」
「だって龍が出るもの」
「?」
話を聞いてみた。
Gさんはよくお守りの水晶数珠を目黒不動尊に持ち込んで浄化してもらう。
目黒不動尊では決まった時間にお坊さんが本堂に出てきて勤行をするのだが、午後三時もそれに当たり、お坊さんが出てくる。年老いたガリガリのお坊さんが、お弟子さんと見える若い僧に支えられてヨロヨロと歩いて来ると力なく座り、勤行を始める。
すると本尊の前に大きな炎が出現する。もちろん普通の人には見えぬ炎だ。そしてその横に今度は龍が一匹出現する。
黒の不動尊は水の気を纏った不動尊だと何となく思っていたが、実際には不動尊と水の神様である龍の組み合わせで辻褄を合わせているようだ。なるほどこれなら無駄がない。
向こうの世界も色々と工夫するものである。