正月。近くの神社でおみくじを引く。
おみくじはその中に「待ち人:来る」などと書かれているがこれは大まか過ぎて意味がない。
大事なのはおみくじの上に書かれている短歌である。これが占宣であり、神が見せた未来である。
母の運命は? そう願っておみくじを引いた。
雪降りて新しい道が開けるという意味の短歌が書かれている。
これはつまり雪が降った後に母が死ぬということか。そう解釈した。
その年の一月は雪が降らなかった。
その年の二月も雪が降らなかった。
母は病床で寝て過ごしている。末期の肺ガンだ。治るわけもない。
その年の三月。暖冬を示すかのように桜が咲き始めた。
これはもしや奇跡的にこれから一年生き延びるということか。確かにサトさんのように4Bのガンで十年生きている人もいる。
だが三月の中頃、青空を背景にして。
「母さん。雪が降って来たよ」
僅かながらも雪。それを見ながらやはりと思った。
母の命運は決した。ほどなく死ぬだろう。